YUTAKAチャンネルpremium地域医療編 前編
今回の町の広報番組YUTAKAチャンネルpremiumでは、福井県高浜町で地域医療に貢献されている4人の医師の先生方と町長が対談を行いました。
【出演者】
○ 高浜町 野 瀬 豊 町長
○ 福井大学医学部地域プライマリケア講座 井階 友貴 先生
○ 福井大学医学部地域プライマリケア講座 安原 大生 先生
○ JCHO若狭高浜病院 海透 優太 先生
○ 高浜町国民健康保険 和田診療所 細川 知江子 先生
まずは自己紹介から
町長:本日は高浜町で医療に従事いただいている4人の先生にお越しいただきました。自治体にとって、絶対に不可欠なものの1つとして医療体制・医療資源があります。高浜町には医療機関いくつかございますが、本日は高浜町の直営である和田診療所の細川所長、高浜町が開設しています福井大学医学部地域プライマリケア講座(以下、寄附講座)の教授である井階先生、高浜病院から海透先生、安原先生に来ていただきまして、これからの高浜町の医療について考えられたらなと思っています。
本日4名の先生方にお越しいただいてるように、医師の数は一定の数充足させていただいておりますが、私が町長に就任した平成20年の段階では、高浜町で常勤の医師は5人しかおらず、医療崩壊が危ぶまれる状況でした。そのような状況の中で、関係者の皆さんと一緒に考えながら、寄附講座を開設するなど対策を講じて、今日のような状況になりました。今はある程度整った体制で医療が守られていますが、人口減や地方の衰退など、今後の不安要素も踏まえまして、持続可能な高浜町の医療について対談していきたいと思います。
それでは今日のゲストの先生方に自己紹介を1人ずつお願いします。まずは寄附講座の教授で、皆さまおなじみの井階先生です。
井階先生:こんにちは。福井大学医学部地域プライマリケア講座という研究室に所属している井階友貴です。早いものでもう15年高浜町でお世話になっております。今は高浜町の和田診療所と若狭高浜病院で臨床業務を行いながら町の皆さまと楽しく町と医療を考えています。今日はどうぞよろしくお願いします。
町長:よろしくお願いします。それでは次に、高浜町の直営の診療所であります和田診療所の所長、細川先生お願いします。
細川先生:こんにちは。高浜町和田診療所の所長をしております細川知江子です。私は和田診療所、通称「和田診」が開設された平成16年から学生として見学に来て以来、もうかれこれ15年強くらい和田診療所に携わらせていただいています。日々高浜町の皆さまにいろいろなことを教えてもらいながら地域医療を楽しんでおります。今日はよろしくお願いします。
町長:よろしくお願いします。続きまして高浜病院の海透先生から自己紹介をお願いします。
海透先生:JCHO若狭高浜病院に勤めております、整形外科の海透優太と申します。僕の父親が高浜町出身ですので、海透という名前を背負って生涯高浜でという気持ちでこちらに戻ってきました。井階先生と細川先生には学生時代から大変お世話になっており、高浜に戻ってくるきっかけになったと感じています。やはり高浜町で生きていくからには、7年祭りに出ることが目標です。町民として認められ、医療によって全ての高浜町民のために尽くしたいというのが僕の強い想いです。
町長:ありがたい想い、ありがとうございます。続きまして寄附講座教員で高浜病院にも和田診療所にもお世話になっている安原先生です。
安原先生:こんにちは。福井大学医学部地域プライマリケア講座の安原大生です。もともと私は、高浜町には大学も出身地も別で縁もゆかりもありませんでした。大学の時にセミナーで井階先生と細川先生に出会い、海透先生ともつながり、それをきっかけに総合診療と出会ったのがご縁となり、その後、総合診療を高浜町で研修することになって、高浜町に帰ってきました。今はこの地域で診療に携わりながら成長させていただいています。よろしくお願いします。
今後も地域医療を高浜町で持続的に守っていくために
町長:先ほど申しました福井大学との寄附講座を皮切りに、地域で医療に必要な人材を育てていくことを一つのコンセプトにし、医学教育のフィールドとして提供させていただいていますが、今後、高浜町の地域医療を持続的に守っていくためにはどのようなことが必要でしょうか。
井階先生:はい、大きく3つあると思っています。
1つ目は「医療の内容と質」です。都市部のように大きな総合病院があるような場所ではなく、小さなコミュニティホスピタルが一つと、小さな診療所があるような身近な医療をどういうふうに考えていくかですね。そこは長年高浜町を見てきた細川先生もいろいろ考えられていますね。
2つ目は「教育」です。教育がないと次の世代にはつながらず、分野の発展や質の向上も見込めません。将来に対する投資である教育なくしては、尻すぼみにどうしてもなってしまう。和田診でも教育は提供していますが、高浜病院でより教育に熱のあるお二人が来てくれたことは、高浜町にとっては財産でしかないですよね。
3つ目は「地域との連携」です。医療は医者が提供するものだけではなく、地域のニーズに、我々がどのように応じていくかが地域医療だと思っています。住民の方が医療を他人ごとに感じたり、難しいからわからないと投げ出したりするではなく、積極的に医療に関心を持って欲しいです。住民だからこそできることもあり、高浜町の場合は地域医療サポーターの会という住民団体に長年支援をいただいています。医療のことを考えていただく機会が町中にあることを実現しているのは本当に嬉しいです。
町長:細川先生は高浜町に来て何年ですか。
細川先生:学生で見学に来た時からだと19年くらいです。
町長:約20年間医師として和田診療所に携わって、変化は感じられていますか。
細川先生:私たちが展開している医療は、患者さんの日常を応援する医療になります。これまで、患者さんにたくさんの事を教えていただきました。患者さんの空気感は変わらなくて、私はそれが良い町・人だと感じて、それで高浜町が好きになりました。それを私と同じように高浜町を思ってくれる仲間が増えたという変化はとても良かったと思っています。
町長:教育が1つ重要な要素だという話がありました。寄附講座を始めた時にも、若い先生方は、色々な経験やスキルアップができて、教えてもらえる体制があるのが大事だとお聞きしました。今は、診療所から高浜病院に教育のフィールドの比重が移っています。教育の重要性や教育をする上で高浜町に足りない部分があれば教えてください。
海透先生:教育が人や文化を育むことはもちろんのこと、教育で最も重要なのは、実際に提供している人が楽しんでいることです。また、教育を受ける人や町にとって、良い教育になっているのかを悩み続ける姿勢を取り続けることです。提供しているものが最高だとなってしまったら、それは教育ではなく、ただの押し付けになってしまいます。日々悩みながら教育を提供し続ける姿勢は、マンパワー的に高浜病院の方がとりやすいため、和田診療所と連携しながら行っています。
町長:安原先生はどう思われますか。
安原先生:僕はこの地域の教育に呼び寄せられてきた一人だと思っています。僕が高浜町と縁を持たせてもらったのが大学3年生の時です。町で主催されているセミナーで、初めて高浜町の教育に触れる瞬間がありました。受け入れてもらえるという安心を強く感じて「ここにきたら大丈夫だな」と思い、研修がスタートしました。その中で海透先生と出会い、教育の楽しさを全身で味わったことで、別の病院に研修してまた高浜町に帰って来ようと思いました。
受け入れてもらえる感覚が僕にとってはすごく大事で、それが楽しさになり、今ではチャレンジに惜しみなく背中を押してくれる、必要としてくれて、チャレンジを応援してくれる環境こそ、今僕がここにいる理由だと思います。それが、教育から始まりつながってきたんじゃないかと考えています。
町長:共通の経験と思いを持った仲間がいることや楽しく感じることは大事だと思います。
井階先生:僕も歳ですけど、地方や田舎の医者としては若手なんですよね。ただ、高浜町では僕と細川先生が40過ぎで、上から数えた方が早いぐらいです。一般的には田舎だともっとお年寄りの先生が多いですよね。これだけ若者が集まっているのは、議会や住民の皆さまに理解していただき、先進的に地域医療の教育を整えてきた結果だと思います。
海透先生:町と大学と病院と診療所が一体になっていることは恵まれた環境で、しかも、それぞれで推進力になるような人々がいるのは面白くて、ともも期待大だと思います。
高浜でできることは他ではできないかもしれないけれど、高浜だったら実現できることがあると思って僕はやっています。ぜひ町民の皆さんには期待してもらいたいです。その期待がニーズを生んで「病院だとこんなことは無理だろうな」と思っても、むしろ聞いてほしい。期待があって、初めて我々は期待に応えるために色々成長できると思っているので、町民の皆さんは、ぜひ医療への期待をしてほしいと思います。
次回後編では「連携」について対談します。
前編動画は以下よりご覧いただけます。