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豊かな恵みを未来につなげる、海のSDGs。 海底の森、藻場を守る漁師たち。


海底の森、藻場を守る漁師たち。「若狭高浜ブループロジェクト(WTBP)」

藻場(もば)って聞いたことありますか?藻場とは、海底を覆う海藻の森のこと。アワビやサザエなど貝類の餌場であり、魚の産卵や稚魚の育つ場としての役割もある、水生生物の生活に不可欠な森です。

さらに、藻場は、栄養塩類や炭酸ガスを吸収して酸素を供給するなど海水の浄化にも大きく貢献しています。陸地でも森の木々が空気をきれいにしてくれていますよね。それと同じです。

けれど、いま、その藻場に大問題が発生。海藻を食べる魚やウニが増えすぎたことで生態系のバランスが崩れ、藻場が砂漠化してしまうという磯焼けが全国の沿岸部で広がっています。例にもれず、ここ高浜の海でも近年ムラサキウニが大量発生。藻場を食い尽くしてしまい、磯焼け状態に。漁師をはじめ、漁業者たちの頭を悩ませています。

ウニはストレスに弱く、岩に穴を開けて隠れてしまう

もともと海の水質保全のために海底の清掃や貝類の種苗・魚の稚魚放流などが行われてきましたが「藻場を食い尽くして大量発生するウニをどうにかしたい!」と、漁師を中心にプロジェクトチームが発足。

『若狭高浜ブループロジェクト(WTBP)』がはじまりました。高浜の海を未来へつなげる活動です。


教えて!漁師さん。「若狭高浜ブループロジェクト(WTBP)」の活動について聞きました。

WTBPはどんな目標に向かって、どんな活動をしているのか。高浜町漁村青壮年連絡協議会の会長であり、WTBPの中心メンバーでもある、若手漁師の岩本さんが教えてくださいました。

気さくで楽しい、岩本裕さん。

岩本:
「WTBPが立ち上がったのは去年。藻場の減少に対してムラサキウニは増え続けているのをどうにかしたい!って、プロジェクトがはじまったんですけど、その目的はいまも変わっていませんね。すぐに成果が出るものでもないので、継続してやっていかないと。」

すぐに成果が出るものじゃないという時点で、問題の深刻さがうかがえます。具体的にはどんな活動で藻場を守っていらっしゃるんでしょう。

WTBPオリジナルのカッパ

岩本:
「ムラサキウニを駆除しています。最初はウニの利活用を考えて、レタスやトマトを餌としたムラサキウニの畜養や商品開発を取り組んだんです。ムラサキウニは実入りが少ないけれど、味は美味しい。ちゃんと養殖して実入りが多くなれば商品として活用できます。でも、なかなかうまくは進まなかった。畜養(海を生け簀として使う)は台風とか自然災害の影響も大きくて…ウニが流されちゃうんですよね。台風が来ると。だから、とにかく藻場を守るために、ムラサキウニを駆除する方法に切り替えました。」

試行錯誤の末、駆除に踏み切ったというワケですね。でも駆除するのも大変なのでは?一掃できるわけではないですもんね。

岩本:
「ひとつひとつ、コツコツと!ですね。長い棒の先にウニをつぶせる金具をつけた漁師自作の武器を使って、ウニをつぶしていっています。素潜りして作業する人もいれば、船の上からウニをつぶす人もいますよ。どちらにしても、キツイ作業ですけど、みんなでがんばっています。」

自作の武器

駆除作業は温かく水温が高い5月~6月ごろを中心に行われます。年4回ほど行っているのだとか。日差しが強くなる夏場に長時間駆除作業をするのは過酷ですが、漁師さんたちは疲労に負けずに頑張ってらっしゃいます。

岩本:
「実際、駆除作業してみると、思った以上に海中の岩場はウニの住かになってしまっていて、目の前に100個以上のウニがある!なんてこともよくあります。みんなの地道な頑張りで昨年度は2万個、今年は1万2千個も減らすことができました。ウニをつぶすだけではなく、昨年から海藻がつきやすい構造の『貝藻(かいそう)くん』という漁礁を海の中に設置することもはじめています。海の生き物の住かにも、餌にもなる藻場を増やしていくことは環境改善にもつながるので。」

右のクレーンで吊られているのが『貝藻(かいそう)くん』

岩本:
「ウニの駆除は続けていかないといけないことですが、本当はウニをなにかに活用できるようにしていきたいんですよね。ウニは美味しいし、つぶしてしまうのはもったいない。いま『高浜明日研究所』の方と協力して、子どもたちのアイデアをもらいながら商品開発も進めているんです。」

大量のムラサキウニ。別の方向から見れば、豊富な資源ともいえます。藻場を守るために、いまは駆除という方法をとられていますが、できることなら活用していきたい。漁師さんたちの悩み解決に、町の子どもたちもアイデアを出します。


アイデア続々!子どもたちと商品開発。

高浜町の『あしたあったらイイな』を見つける有志のまちづくりチーム「高浜明日研究所(アスケン)」が町の小学生とタッグを組んで商品開発をする「コドモノ明日研究所(コドモノアスケン)」。昨年は、高浜産のブドウ・若狭ふじを使用した商品開発にアイデアを出し、ゼリータルトを製品化しました。今年は、ムラサキウニの活用に子どもたちの知恵が光ります。

※高浜明日研究所(アスケン)についてはこちらの記事をご覧ください

10班に分かれた子どもたちが、それぞれウニの利活用について考えます。みんなはムラサキウニの中身がとても少ないことに驚いたのだとか。それを知った上で、どんな商品にするか、どんな特徴があるか、デザインやネーミングまで、みんなで話し合って考案。

そしてムラサキウニを利用した新しい商品のアイデアをプレゼン大会で発表。投票により、見事1位を獲得したアイデアが商品化されます。

それにしても、子どもたちの柔軟な感性は素晴らしい。大人では考えられないようなアイデアも飛び出しました。このプレゼン大会は福井県の杉本知事も観覧。子どもたちは緊張しながらも、堂々としたプレゼンを行いました。

そして気になるプレゼン大会の結果は、ウニのランプが1位に。なんと、ウニの殻を利用するという目のつけどころもナイスです。ウニのランプは、ただいま、商品化に向けてブラッシュアップ中。売り出されるのが待ち遠しい!


ウニは悪者じゃない。共存する未来へ。

藻場を食い尽くしてしまうムラサキウニ。そのムラサキウニが急激に増え始めたのは10年ほど前からなのだとか。つまり昔はそこまで多くはなかったということ。温暖化をはじめとする地球の環境変化が、少なからず影響を与えているのではないでしょうか。

こちらは赤ウニ

本当はムラサキウニを駆除すべき悪者ではなく、豊富な資源として活用していきたい。岩本さんをはじめ、漁師さんの本当の願いも「共存」です。子どもたちのアイデアは、ウニと共存する未来に向けて歩みだす第一歩になるかもしれません。海の恵みと一緒に、豊かな地域をつくっていきたいですね。

写真提供:高浜町産業振興課、高浜明日研究所

※ 2021/12/28に、高浜町ポータルサイト「ピン!ト」にUPされた記事です。


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