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YUTAKAチャンネルpremium地域医療編 後編

地域医療前編では様々なテーマについて話しました。前回から引き続き地域医療についての話をお楽しみください。

【出演者】
○ 高浜町 野 瀬 豊 町長
○ 福井大学医学部地域プライマリケア講座 井階 友貴 先生
○ 福井大学医学部地域プライマリケア講座 安原 大生 先生
○ JCHO若狭高浜病院 海透 優太 先生
○ 高浜町国民健康保険 和田診療所 細川 知江子 先生

高浜町×福井大学×高浜病院の三者協定について

町長: 話の切り口を変えまして、2年前に高浜町・福井大学・JCHO若狭高浜病院の三者で連携協定を結ばせていただきました。コロナもありましたので、具体的な取り組みはこれからということになると思いますが、協定を締結したとはいえ、それぞれ独立した組織ですので、意思決定の違いや戦略のズレが生じる可能性あると思います。連携を一段上に充実させ、医療体制の持続可能性のヒントや要点を教えてください。
 
井階先生:はい。高浜町は寄附講座に15年間取り組んでいただいて、教育面だと人口1万人の町に年間130名ぐらいの医療系の学生や研修の先生がいらっしゃっています。実は、これは他からびっくりされるぐらいの数字で、それは町の皆さまや教育を提供しようという先生方、あるいはスタッフの皆さまのおかげで実現しています。冒頭に話した通り、最初は医師が5人まで減ってしまいましたが、医学教育の提供によって8年ぐらいかけて元の水準の13名ぐらいまで戻りました。


住民の方にも2009年から高浜地域医療サポーターの会として活動いただいており、地域医療分野の住民活動ではもうかなり老舗の会となりました。10周年の時は町長表彰もいただき、その後厚労省の「第1回 上手な医療のかかり方アワード」の住民団体部門も受賞しました。一緒に取り組んでいる仲間としては本当にありがたい存在です。このように多くの成果が出てきましたが、これからもどんどん時代も変わり、さらに前を向いていかないといけないという時に、三者の連携協定を結んでいただきました。たかはま地域医療イノベーションセンターという象徴的な部屋も設置いただき、より連携できればと思っています。


診療所と病院で別々に教育するのではなく、一体的に魅力が伝わる教育ができないかと考えたり、住民の皆さまに医療を一緒に考えていただいたり、さらには、医療という分野をさらに広げて、健康全体や町全体のことを一緒に考えていける仕組みづくりが必要です。僕は大学の立場ですけど、大学だけではなく診療所や病院、他の医師以外のスタッフの方や行政の皆さんも一緒に関わっていけるような幅広い視点を実現するための舞台として、三者の協定はすごく可能性があると思っています。


コロナでなかなか思うように進まなかったところもありますが、今日のこの出演を機に推進することを期待しています。
例えば在宅医療を含めた連携や教育は他の先生方も日々感じていらっしゃると思うので、ぜひ僕も聞いてみたいです。
 

たかはま地域医療イノベーションセンター

在宅医療と病院の連携

町長:在宅医療を含めて病院との連携について教えてください。
 
細川先生:私も高浜に来てから在宅医療として自宅で看取った患者さまも多くいらっしゃいます。しかし、診療所の常勤医師が私1人になって、24時間全員に対応することに限界があった時は、在宅での看取りを提案できない時期もありましたが、三者連携の中で、高浜病院さんと連携しようという動きになったのはありがたかったです。


日本では厚労省が在宅医療を推進してる中で、初期研修医のカリキュラムの中に、私の頃にはなかった在宅医療実習が必須になっています。在宅医療実習を診療所が行い、病棟での実習を高浜病院で行う、両方を研修できるという環境はなかなか全国的にもないと思います。
「あの研修医の先生がこんなことを学んでたよ」というのを共有し合えるのは、私にとってもありがたいことですし、研修を良かったと喜んでくれる学生さんや研修医の先生も大勢いらっしゃいます。
 

医療を属人化しない仕組みづくり


町長:お互いをフォローし合える関係性は仕組みだけではなく、元々の関係性もあったからということもありますか。
 
海透先生:先ほど細川先生がおっしゃってましたけど、自分1人で24時間在宅医療を続けていくことが難しいという状況を言葉にすると「属人化」と呼ばれるような「この人じゃないといけない」みたいな、実は地域医療はそのようなイメージが結構強いと思います。しかし、町長が先ほどおっしゃったみたいに、持続可能な医療をキープしようと思ったら、「〇〇先生じゃなきゃ嫌だ」という方をどうやって作らないかを考えていかなきゃいけないですよね。
町にとってのWinは町が活性化されること、大学にとってのWinは人材を預ければ成長して帰ってくること、高浜病院にとってのWinは、現場で、ある一定期間マンパワーとして町民のために働き成長してくれることです。この全てのWinを同時に達成しようとすると、ぐるぐる人が回っていくことを喜ぶ仕組みが必要だと思います。


僕の勝手な発想ですけど、今、うちの宿舎はボロいです。高浜病院で研修している彼らは、病院での実習は楽しいし、診療所で実習すると地域で医療をやっている良さを感じるけれど、家に帰ったらボロい(笑) 高浜町そのものの思い出が古い宿舎と共に残るというのもちょっとどうかなと思ってしまいます。これを美しい思い出にして、来て良かったとするには、町が宿舎のような建物を準備してくれるなどのサポートがあればと。



若い世代が町の中で活躍していることを、町がサポートしているという関係はメリットも大きいと思います。人材を支える活動を町もやっていて、高浜町に来た人材が生き生きしてるような循環ができるようになったら、町も大学も病院も「三者・三方よし」になるシステムになっていくでしょう。
このようなシステムができれば、長くこの町に残る人を見つけ出すという作業は不要なのかもしれないですね。長くいてくれたら最高ですけど、実はそんな人を探すのはツチノコを見つけるみたいなものです。そのような人を見つけるより、全員がWinになるシステムを作るほうが魅力的だと思います。
 


町長:非常に 説得力のあるお話でした。国への要望に使いたいくらいです。安原先生はどうでしょうか。
 
安原先生:高浜病院で働かせていただいていて、連携の一つの象徴だと思う部分がカンファレンスです。一人の患者さまに対してみんなで意見を出し合うカンファレンスを、和田診療所・高浜病院の合同で定期的に行っています。そこには大学から派遣されている看護師や高浜病院・和田診療所のスタッフも参加しています。総合診療の現場にいて思うのが、決して一つの正解があるわけではなく、いろんな人の意見に出会って初めて自分の世界が広がり、成長を続けていけるのが総合診療の楽しさだと思っています。


例えば、ある患者さまに関して看護師が「お嫁さんが退院後に介護できるのか心配してました」、ケアマネージャーさんが「息子さんはお金を心配してるんです」みたいな話を聞いた時に、そこで初めて「そういうことも大事なんだ」って気づくシーンが本当によくあります。研修医や学生だけではなく、その場に集まっている人が全然違う立場で物事を見ているので、違う視点が生まれてみんなで成長していく場所になっています。この効果は確実に連携したことが後押しをしてくれて、本当にありがたい環境だと思っています。

町長:協定を締結する以前も、事実上連携されることはあったと思いますが、この協定締結を素地に、町としてさらに次のステージへ一緒に進めたらと思います。

今後に向けて

町長:今後高浜町でこのようになっていったらいいなということや自分自身の想いや夢を教えてください。
 
細川先生:私も含めて高浜町が大好きな人たちが多いんですけど、住民の方から町の愚痴を聞くことも多いです。住民さん自身がもっと町の誇りを持って、いいところを前面に出して、海透先生もおっしゃってましたけど医療への期待をどんどん要望として出してほしいです。私たちは地域の期待に応えるために夢を見させるとすごいところまで行くと思うので、一緒にみんなで夢を見れるといいなと思いました。
 
安原先生:僕自身は高浜町に恩返しをしたいという気持ちが強いです。「ここにいると楽しいよ」ということを味わわせてもらったので、みんなで共に学べて、それが楽しいという空気作りに貢献できたらいいなと思っています。その手段として自分が受けてきた教育を使って、学ぶことは楽しいという環境をみんなで作れたらいいなと思っています。
 
海透先生:僕は地元にずっと残ると思ってくれる人たちを探すことは大変なので、母なる大地になりたいと思っています。理不尽なことに耐えなきゃいけないことあるかもしれませんが、主語を「Ⅰ」」から「We」に変えて、みんなでやっていけるような人生を送りたいなと思っています。その中心に、医療と教育と町に関わり続けて幸せでいることがあると思うので、それを継続していきたいです。
 


井階先生:今日は町長のチャンネルに出させていただいて、多分伝わっていると思うんですけど本当に楽しい仲間が集まっています。楽しいだけではなくお互い尊敬していて、お互いにいてくれてありがたいと思いながらやっています。今日もその楽しさが爆発して、普段より面白いチャンネルとして貢献できたかな(笑)僕個人的には、町内の病院や診療所の運営は皆さんにお任せして、大学の立場としてもっと対外的に繋がっていきたいと思います。そのつながりによって高浜町にも力が降りていくと思います。僕自身、外と行き来するとパワーもらえるので、その力を注げるようにこれからも頑張っていきたい と思ってます。
 
町長:皆さんの パワーがさらに浸透してさらにいい土壌になりますように願いたいと思います。それでは今日は素晴らしい4名の先生方をお招きしました。ではまた次回のYUTAKAチャンネルでお会いしましょう。
 
井階先生:最後に学生の皆さんとかと一緒に、記念写真を撮る時にやっている高浜の波のポーズを。
 

波のポーズ


海透先生:色んな学会でも高浜町公認の波のポーズと言っちゃってるんで(笑)
 
町長:波のポーズは ストーリーズかリール動画にしましょう。
 
海透先生:正面から少し右に向いて、右手で後ろから希望のビッグウェーブを、左手は平穏のさざ波ポーズです。これでようやく高浜町公認と言えるようになりましたね。6年越しかな。

後編動画は以下よりご覧いただけます。


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